【まもなくスタート】私のSDGsチャレンジ特集

持続可能性について考えてみましょう(SDGs編)

以前の記事で、SDGsランキング上位の北欧諸国の事例を紹介しましたが、2021年6月に発表された「Sustainable Development Report2021」においても、1位フィンランド、2位スウェーデン、3位デンマークという結果でした。では、世界のすべての国が、北欧諸国のようなSDGsを実現した生活をすれば、「持続可能な社会」が実現できるのでしょうか?

私は、2019年に「持続可能な環境モデル地区」として注目を集めているスウェーデンのウェスタンハーバー地区へ現地取材に行きました。ウェスタンハーバー地区では100%再生可能エネルギーの実現や省エネ住宅による街づくりを実現しており、世界でも先進的な持続可能な街のモデルと言われています。他方、この地区では、古い建物をすべて取り壊し、新たな資材で建物が新築され続けており、私は、このような街づくりは、本当に「持続可能な環境モデル」なのだろうかという疑問を感じました。例えば、この街づくりにおける環境負荷(資源、GHG)が、どこにカウントされているのか、また、グローバルサウスを含めて世界中でこのモデルと同様の街づくりを実現してくことは可能なのか等、地球全体で考えた場合の持続可能性について課題認識を持ちました。

人類学者のJason Hickelが、2020年10月にNewsweekに寄稿した「The World’s Sustainable Development Goals Aren’t Sustainable(SDGsは持続可能ではない)」という記事を紹介します。この記事では、SDGsランキングと持続可能性の関係について、彼の見解を示しています。

まず、各国のSDGsの達成度を評価するツールとして、SDGインデックスが一般的に利用されていますが、このインデックスは持続可能性を測定するものではなく、むしろランキングで上位に入っている国の一部は、地球環境への負荷という点から見れば、最も持続不可能な状況にあるとの見解を示しています。例えば、もしすべての国がスウェーデンと同様の消費生活をした場合、現時点で全人類が消費している資源のおよそ3倍が必要となること。またフィンランドの一人当たりの化石燃料消費量は、中国の約2倍であること。さらに、SDGインデックスの上位の国々は資源の消費量やGHG排出だけでなく、土地利用や窒素などの化学物質の環境への排出量といった点でも、人口比で各国に許容される範囲を大幅に超えており、各国がSDGインデックス上位国のレベルで消費し、環境汚染を続けていくと、地球の生態系は間違いなく、物理的に壊れてしまうと述べられています。

では、なぜSDGインデックスと持続可能性の整合性がとれないのでしょうか? SDGインデックスはSDGsの17の持続可能な開発目標によって作られており、それぞれの目標には各ターゲットが含まれています。点数の算出は、各ターゲットの達成度を評価したうえで、目標毎の平均値で最終評価する仕組みになっています。どの目標も①エコロジカルな負荷、②社会的な開発度、③インフラの開発度の3つの観点から評価されますが、多くの場合、開発関連の評価項目数がエコロジカルな負荷の評価項目数を上回っています。例えば、SDGs#11(住み続けられるまちづくり)には4つの評価項目がありますが、そのうちの3つは開発関連であり、生態系への影響に関する項目は1つだけです。つまり、生態系への負荷が大きくても、結果として点数は高くなる仕組みとなっています。しかも、17の目標のうち、生態系の持続可能性を重視しているのは4つ(目標12~15)だけで、あとの13目標は開発に重点を置いています。そのような仕組みから、生態系・環境負荷が低いとはいえないスウェーデンやフィンランドがランキング上位に来ているとJason Hickelは説明しています。

さらに、Jason Hickelは、エコロジカルな負荷の評価が国内だけを対象としていて、国境を越えた貿易の影響を考慮していない問題も指摘しています。例えば、目標11の大気汚染に関する項目では、殆どの先進国の点数は高いのですが、多くの先進国は、工場を国外に移転させており、環境負荷の外部化をしている現状があります。SDGランキングの低い発展途上国で起きている森林破壊や魚の乱獲についても、裕福な先進国の消費を支えていると述べています。Jason Hickelは、このような現状を改善するには、国連はSDGインデックスの見直しが必要性であると主張しています。具体的には、①エコロジカルな負荷を消費ベースで計算し、国外での発生分も考慮に入れること②環境負荷と開発の成果を別々に評価し、実態を正しく把握することです。

以上、今回は、SDGランキング上位の北欧諸国を中心に紹介しましたが、この記事の先進国には、当然、日本も含まれています。私は、SDGsは、今のままでは壊れてしまう地球を修復し、希望ある未来にするための、健全なパラダイムシフトであり、その実現には、それぞれが自分事として捉え、行動を変えていく事が大切であると思っています。2030年までのSDGs達成、2050年のネット・ゼロ社会の実現に向けて、私たちが取り組み、チャレンジするプロジェクトや事業は本当に持続可能なのか? それを考え、探求・分析、見える化し、改善を繰り返しながら行動していくことが、これから、益々重要になってくると思います。今後の記事では、持続可能性について深掘りしていくため、①プラネタリーバウンダリー、②ドーナツ経済、③グローバルコモンズスチュワートシップ、などについて解説していきたいと思います。